『謎ときサリンジャー』は激ヤバ本
お久しぶりです。気付けば最後の投稿から4年経っていました。4年と言うと、鼻糞みたいなサイズで生まれたパンダが体重100kgに達するほどの期間なので、とにかく怖ろしいほどの時間が経ってしまったことになる。もちろん現在は昭和でも平成でもなく令和なので、「パンダの体重とは無関係に4年は4年だろ」という味気ない意見もあるかと思うが、多様な意見が出るのは決して悪いことではないので、富士山の頂上付近で「4年は4年だ!」と叫んでみると良いだろう。全国から集まった登山家からは「君の言うとおりだ!」という賛同の意見が出たり、「うるさい黙れ!」という厳しい意見が出たりするかもしれないが、多くの登山家は「ここで言うことかな」と思うことだろう。TPOは大事だから。
若干脱線してしまったが、兎にも角にも、この4年間元気に生きてました。そして今回は『謎ときサリンジャー 「自殺」したのは誰なのか』(竹内康浩、朴舜起の共著)を読みました。
ここ数年で最も興奮しながら読んだ本であることは間違いない。念のため付け加えておくと、ここ数年で読んだ本が、この『謎ときサリンジャー』と『医師が教える新型コロナワクチンの正体(内海聡著)』だけとかそんな読書歴ではないから安心してほしい。
『謎ときサリンジャー』はその副題「「自殺」したのは誰なのか」とあるように、サリンジャーの短編『バナナフィッシュにうってつけの日』のラストでの主人公の死が自殺によるものなのかという問いから始まる。もちろん最初は「どう考えても自殺だろ」と反応してしまうのだが、ページをめくるごとにずんずんと勢いよく説得されていくので、立ち会いで優位にたった高見盛が、次第に朝青龍に押し込まれていったときのような心境になる。おそらく勝海舟と会った坂本龍馬の心境もこれに近いと思われるが、なにぶん勝海舟も坂本龍馬も私の地元にはいなかったのではっきりしたことは分からない。
本文中では、白隠慧鶴、鈴木大拙、松尾芭蕉、阿波研造、木村敏などが次々に登場して往年のプロレスのような様相を呈してきて、サリンジャーが狂っているのか、ホールデンが狂っているのか、私が狂っているのか、著者の竹内康浩が狂っているのか分からなくなってくるが、おそらく皆が狂っているのだろうと納得する圧倒的な読後感である。とにかく騙されたと思って読んでみてほしいというのが正直な気持ちなのだが、騙してまで読んでもらうって人としてどうなのという気持ちも正直あるので、最終的に読みたければ読んでみなよというのが正直な気持ちで、正直過ぎるのもいかがなものかという心持ちだ。