映画『人生フルーツ』を観た

映画『人生フルーツ』を観た。美しい映画であり、同時に「怖い」映画でもあった。映画の公式サイトの作品解説にはこうある。

雑木林に囲まれた一軒の平屋。それは建築家の津端修一さんが、師であるアントニン・レーモンドの自邸に倣って建てた家。四季折々、キッチンガーデンを彩る70種の野菜と50種の果実が、妻・英子さんの手で美味しいごちそうに変わります。刺繍や編み物から機織りまで、何でもこなす英子さん。ふたりは、たがいの名を「さん付け」で呼び合います。長年連れ添った夫婦の暮らしは、細やかな気遣いと工夫に満ちていました。


夢想家の夫が夢だけを見続けることができるように力を尽くした妻を描いた作品という印象をもった。夢想家はその能力にかかわらず、常に「挫折」する。再び映画の公式サイトから引用する:

かつて日本住宅公団のエースだった修一さんは、阿佐ヶ谷住宅や多摩平団地などの都市計画に携わってきました。1960年代、風の通り道となる雑木林を残し、自然との共生を目指したニュータウンを計画。けれど、経済優先の時代はそれを許さず、完成したのは理想とはほど遠い無機質な大規模団地。修一さんは、それまでの仕事から距離を置き、自ら手がけたニュータウンに土地を買い、家を建て、雑木林を育てはじめましたーー。


これだけではなく、アドバイザーを務めた台湾のニュータウン計画でも、アドバイスを求められながらそのアドバイスが実現しないという、先ほどと同じような「挫折」の場面が出てくる。そして極めつけは修一さんが90歳のときにオファーのあった仕事だ。とある精神科病院の設計の仕事が舞い込み、施主は修一さんの設計に沿って着工したのだが、それが完成する前に今度は修一さんに死が訪れるのだ。


この偉大な夢想家が夢を実現させたのが、この「雑木林に囲まれた一軒の平屋」であり、そこでの穏やかな日常であった。この夫婦と家と自然とが絶妙な調和を保って静かな日々が過ぎていく。その生活は確かに美しい。しかし、先に触れたように、修一さんに死が訪れる。長年二人で培ってきた調和のとれた世界。そこにぽっかりと大きな穴があく。そのとき、ひとり「取り残された」英子さんは「虚しい・・・」と呟く。調和のとれた世界の美しさと、その調和が失われたときの怖さとを、同時に味わえる映画になっている。5点満点で140点。



修一さんが亡くなられたからの英子さんの生活が書籍になっているようです。是非読みたい。

ふたりからひとり ~ときをためる暮らし それから~
つばた 英子 つばた しゅういち
自然食通信社
売り上げランキング: 1,347



ききがたり ときをためる暮らし
つばた 英子 つばた しゅういち 水野 恵美子 落合 由利子
自然食通信社
売り上げランキング: 1,158


ひでこさんのたからもの。
つばた 英子 つばた しゅういち
主婦と生活社
売り上げランキング: 1,805