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園遊会直訴問題に寄せて [ポエム]

吹けよ風、呼べよ嵐

園遊会直訴問題が波紋を広げている。私なども怒りに震えているひとりだ。この怒りの理由についてはこれから縷々説明していこうと思うが、そのためにはまず「せんとくん再就職問題」の説明をしておかなければならない。


せんとくんというのはあの奈良のせんとくんのことだ。せんとくんは元々平城遷都1300年記念事業の公式キャラクターであった。発表直後に「キモい」「キモくない」「キモいけど可愛い」「キモくないけど可愛くはない」「キモいし可愛くない」など、奈良県内にとどまらず日本全体が分裂状態に陥るほどの論争となったものの、その後はけろっと何事もなかったかのように定着したことは記憶に新しい。しかし、1300年祭が終了する前後からせんとくんの処遇をめぐる議論がにわかに熱を帯びてきた。千年以上前に首都が奈良県内で移動しただけのことなのに (しかもその後百年持たずに京都に移っちゃった)、今だにそんな過去に縛り付けられて引き続きせんとくんを奈良の観光マスコットに採用してしまっていいのかという声が落合GMから出たのだ。そしてそれに追随するかのように、せんとくんを自由契約にして、新たにきんぎょくんというマスコットをつくってくれという声が全国七千万の大和郡山市民からあがり、おいおいそういうことならダイスギくんもつくってくれという要望が全世界九千万の宇陀市民からあがるなど、奈良県はせんとくんの処遇をめぐって県を二分、三分しての争いとなっていたのだ。以上がせんとくん再就職問題の概要である。


さて、山本太郎直訴問題である。この問題が発覚した際、多くの人々と同様に私も次のような展開を予想した。山本さんの軽率な行動に対して各方面からの厳しい批判が噴出するなか、日本を代表する保守政党であった旧たちあがれ日本の先生方もこの問題に参戦してくる。そして、日本を代表する保守政治家の平沼先生か石原先生あたりが「山本君のあれは確かに軽率な行動であったが、しかし、直筆の手紙というのは素晴らしい。陛下とラインをして既読無視とかするよりはずっといい。そもそも私はツイッターやらFacebookやらで軽率な発言をする人間を信用していない」と異次元のコメントを放つのだ。こうなると、この発言を自身への批判と受け止めた橋下先生が態度を硬化させ、ついにはと言うのか、ようやくと言うのか、維新の会が大分裂に至るのだ。これにより橋下先生も石原先生も政界での影響力を急激に低下させて事実上政治生命を絶たれてしまう。もちろん石原良純は元気だから心配いらないよ。この展開を確信した段階で、私は維新分裂関連株を大量に買い漁った。


この維新の会分裂によって、大阪の都構想も完全に宙に浮いてしまうのだが、これによって窮地に立たされたのが、都構想実現を予想して都構想関連株を買い占めていた一部の闇組織である。この逆風にさらされた一部の闇組織の中の一部の人間が目をつけたのが、せんとくんの再就職問題であった。「せんとくんの再就職先を確保しよう!」を合言葉に、ふわっとした奈良県民の民意を背景になんとなく奈良県を奈良都にした上で、ふわっとした日本国民の民意を背景になんとなく首都機能を奈良に移しさえすれば、なんとなくせんとくんの活躍の場が広がるではないかと世論に訴えた結果、なんとなく奈良ナショナリズムに火がつき、あっという間に業火となって奈良都構想が実現するのである。この展開を確信した段階で、私はせんとくん関連株と奈良ナショナリズム関連株を大量に買い漁った。


奈良遷都が実現したことで、当然ながら奈良への一極集中がものすごい勢いで進行する。なにせ港もなければ飛行機も新幹線も排除するというナチュラルな鎖国体制を選択し、独自の進化を遂げてきた土地柄である。県内に居住しないかぎり奈良に入ることは不可能なため県外に居てはまったく仕事にならない。その結果、物凄い勢いで人口が流入し、有史以来初めて人の数が鹿の数を上回っただけでなく、最終的には南吉野村の人口密度がパキスタンのそれを上回るという事態が生じる。この展開を確信した段階で、私は南吉野村関連株とパキスタン関連株を大量に買い漁った。


直訴問題が発覚した段階で多くの人がこの展開を予想すると見た私は、なんとかライバル達を出し抜こうと株の買い占めを急いだ。そして、なんとか買い占めをやり遂げて、後はただたちあがれ日本のコメントを待ちさえすればよいという段階にまでこぎつけたのだ。そして、直筆絶賛コメントを今か今かと待ち続けているのだが、なんということか待てど暮らせどいっこうにその声が聞こえてこない。一体全体、たちあがれ日本は何をグズグズしているのか。直筆の手紙を褒めるだけの簡単な仕事なのに。ここでもし立ち上がらないのであればあなたたちの存在意義はない。そう言ってやりたい。メールで。本当に考えれば考えるほど怒りがこみ上げてくる。たちあがれ日本のこのていたらくを見ていると、場合によっては陛下に直訴しなければならないのではないかというところまで思い詰め、ペン習字の通信講座のパンフレットを手に入れたというのが現状である。


とにかくせんとくんが好きなんだ。