うらはどこへ行ったのか? 『八重の桜』第三十三回レビュー

1873年。八重が、日本で最初の公立女学校と言われる女紅場の住み込み舎監となり、そして同時にひとりの学生として英語を学ぶ生活が始まってから1年が過ぎていた。


一方、京都府知事(大参事)のハイテンションは続いている。東京への転籍を訴える京都の豪商小野組を蹴散らし、大阪舎密局から引き抜いた覚馬の弟子明石博高が試作したレモネードを飲んで「キュボキュボゴボボなんじゃこりゃ、コリャ売れるぞ!」と叫ぶ場面が今週の槇村ハイライトであった。こうして、覚馬の発案、槇村の決裁、明石の実行というトライアングルが京都の復興を押しすすめていた。


軌道に乗ってきたかのようにみえた女紅場であったが、資金繰りの問題から、生徒たちに月謝を払わせる制度に変更する案が出ていた。こうなっては貧しい家の女学生らは学校に残ることができなくなってしまう。


その話を学生から伝え聞いた八重が一瞬にしてブチ切れる。頭にバンダナ、上半身は裸というスタイリッシュな出で立ちに、巨大な機関銃を抱えるという森ガール風のスタイルで槇村のいる知事室を急襲する。知事室に向かう廊下で八重の侵入を阻止しようとする職員の首をへし折りなぎ倒しながら進む場面は、女性ポップシンガーが頭の悪そうなイケメンどもが言い寄ってくるのをモデル歩きで進みながらはね飛ばす往年のミュージックビデオ風の演出で、長い大河の歴史に残る名場面であった。しかし、槇村も流石に歴戦の強者である。一瞬の隙をついて知事室から逃走する。これでさらに怒りに火がついてしまった八重は逃走した槇村を自宅(覚馬邸の隣にある)まで追跡し、サバイバルナイフを槇村の首に突きつけて、ついには女紅場の予算増額を認めさせる。いつのまにかベトナム帰還兵という設定にしてしまうという強引な演出は今後議論を呼びそうだ。


ところが、その槇村は京都の豪商小野組の業務を妨害した容疑で東京に拘留されてしまう。槇村を救出するために覚馬は八重を伴って東京に向かう。槇村と同じ長州出身の木戸孝允にとりなしを頼むためであった。上京した覚馬と八重は、岩倉、木戸に陳情するんだけれども、まあまあ色々あって、結果的には中央政府内で生じた征韓論争をめぐる対立が深刻化し、槇村勾留にゴーサインを出していた司法大臣の江藤新平が参議を辞任したために、槇村も釈放されることとなった。長くて分かりにくい一文になりましたが、ようするに槇村は釈放されました。征韓論争をめぐっては江藤とともに西郷、板垣も参議を辞任するという重要な局面を迎えたのであったが、ここでは時間の関係もあって太政大臣三条実美の失神芸に対して全国七千万の視聴者から賞賛の声が上がっている事実だけを指摘しておきたいと思う。


覚馬と八重は京都に戻る前に勝海舟と面会する。そこでなぜか勝が尚之助の消息を調べてくれていて、尚之助の所在が明らかになる。勝は私立探偵か! そこで八重は、尚之助が斗南藩を助けるために裁判に巻き込まれていたという事実をはじめて知り衝撃を受け、尚之助に会いに行くこととなる。


尚之助は浅草の長屋で寺子屋の教師をしていた。事情を知った八重は尚之助と一緒に斗南藩に行かなかったことを後悔し、今からでも尚之助のそばに置いてほしいと懇願する。しかし、尚之助は、「私の好きな妻は、夫の前を歩く凛々しい妻です。」と言い、京都に戻って女学校の教師という今の仕事を全うしてほしいと八重に伝える。それに対して八重は「京都で待っています」と言い残して長屋を出て行く。お互いにひとりになった尚之助と八重はおいおいと泣くのであった。


ここは切なくていいシーンでしたけど、こんな風に直接会っちゃったら、どうやって新島さんにバトンダッチするんでしょうか。非常に難易度高そうですけど次回以降に期待したいと思います。


その新島さんは、アメリカの協会で日本に学校を設立する夢を語ります。いよいよ新島襄チラ見せ芸にも終わりがくるのでしょうか。