別れます別れません分かりません『八重の桜』第三十一回レビュー


今回は冒頭で尚之助から米沢の八重宛に手紙が届く。色めき立つ山本家であったが封を開けてみるとそこには離縁状が同封されていた。「なんじゃこりゃ~じぇじぇじぇ」と絶叫する八重であった。


一方、斗南で新生活を始めた旧会津の人々は極貧生活を強いられていた。尚之助は東京での謹慎生活を経て他の藩士らとともに斗南に移ったが、藩の窮乏を救うために北海道にわたり米の買い付けを担当することとなった。ところがそこでオレオレ米米詐欺にあい、膨大な借金を請求されることとなる。事件を取り調べていた役人から斗南藩の藩命で買い付けを行なっていたのだろうと詰問された尚之助であったが、それを否定し事件の責任をひとりで被ることとなった。男尚之助が厳しい財政状況の斗南藩を救ったのである。そして八重に迷惑が及ばないように離縁状を送りつけたのだったが、そのことを露知らない八重は「斗南に良い人でもできたんだべ」とすねるのであった。


この後、吹雪の道中で行き倒れになっていた剛力をドラゴンアッシュが助けてやったのにもかかわらず、元新撰組だと分かった途端にdisり出すという恩知らずな展開があるのだがそれはスルー。


ここで舞台は新政府の会議の場面に移され、廃藩置県という重大な決定が下される。「ハイハンチケン」とカタカナで書くとミスチルのヒット曲のようにも見えるが、藩自体が消滅するという事実は皆に大きな動揺をもたらした。もちろん山本家にも衝撃が走るが、そこにさらに衝撃の知らせが届く。山本糞野郎覚馬の弟子を名乗る少年が死んだはずの山本糞野郎覚馬からの手紙を届けに来たのであった。


その手紙には、山本家の皆を京都に呼び寄せたいという内容がしたためられていた。「なぜ京都?」と訝る八重らであったが、詳細については直接会ってから話したいという山本糞野郎覚馬の希望が弟子の口から伝えられる。しかし不審に思った覚馬の妻うら(ハセキョー)は「旦那様の身のまわりの世話はどなたが?」と核心をついてくる。するとこの間抜けな弟子の口から衝撃の事実が伝えられる。「実は・・・、時栄さんというおなごとの間にこの春赤子が産まれました。」 


失明のことは内緒にしておいて、愛人のことをばらすんか!


当然ながら呆然とするハセキョーであった。ハセキョーにしてみれば上に行ったら宝物がありますと言われてウキウキと屋上まで登ってみたら、無理やり下に突き落とされるようなものである。しかし、この後の抜け殻のようになったハセキョーの演技が圧巻であった。通常の演技に関してはロバート・デ・ニーロよりも速水もこみちに近いと言わざるをえないという評価を下されがちなハセキョーであったが、抜け殻になって意識が半分飛んだ状態の演技に関しては速水もこみちよりもロバート・デ・ニーロに近かったのである。2013年夏、我々は期せずして世紀の抜け殻女優の誕生を目の当たりにすることとなった。


そして今度は斗南の梶原家。廃藩置県で藩が消滅するという事態に動揺した梶原平馬はこちらも抜け殻のようになってしまい妻子を養う気力を失ってしまう。二葉との離縁を決意し、東京に移ることになった山川大蔵に二葉と我が子を託すこととなった。


衝撃の知らせを受けたハセキョーは、京都の覚馬のもとには戻らないことを決心する。娘のミネとの別れのシーンは涙涙であった。


米沢を出発した八重、ミネ、八重ママの三人はついに山本糞野郎覚馬のいる京都に到着する。三人が京都の橋を渡るシーンが思いっきりCGだったのには気付かないふりをしながら、三人は覚馬邸の門前までたどり着く。入り口で声をかけると中から時栄が出てきた。京都人を小馬鹿にしたような不思議な京都弁には気付かないふりをしながら立ち尽くす三人であったが、時栄の後から出てきた覚馬の姿を目にする。そこには視力を失った山本糞野郎覚馬の姿があった。ついについになんと九年ぶりに山本糞野郎覚馬との再会を果たした八重らであった。