権力殺人事件

「権力を英語に訳すとpowerになるらしいね」と吉岡健が問いかけると、向かいに座っているアーサー・ペンは「ああ」とだけ答えた。
「英語では単なる力持ちの力のこともpowerと言うんだろ?」
「・・・・・・」
「力も権力もpowerにしちゃうんじゃ、権の立つ瀬がないよね。」
「立つ瀬がない?」
「権の立場がないってことだよ」
「権の立場がない?」
「結局powerなんだったら、権を付ける意味がないじゃないか」
「ああ。けどそれは君の国の問題じゃないか」
「吉備の国?」
「殺すぞ」




警察の取り調べに対して吉岡は「自分の身を護るためだった」と供述した。
マスコミの取材に応じ「健はペンよりも強しやな」と軽口を叩いた吉岡の弁護人は厳しい批判を浴びた。
吉岡の裁判を担当した裁判官は「吉備の国って言っただけだしな」と情状酌量の余地があることを示唆した。


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鈴木 勇一郎
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