「八重役を角野卓造にすべきたったひとつの理由」『八重の桜』第十二回レビュー 

第十二回は、京都にいる覚馬から会津の実家に手紙が届くところからスタートしました。八重とうら(覚馬の妻)は、「ひょっとして覚馬の身になにかあったか?」と色めき立ちます。しかし、蓋を開けてみると、手紙の内容は八重の縁談についてのものでした。もったいぶる意味が自分でもよく分かりませんが、これについては後述します。


一方、京都ではいよいよ長州勢が御所に押し寄せていわゆる蛤御門の変が起こります。押し寄せる長州勢をなんとか押しとどめようと会津勢は必死に応戦しますが、突入してくる長州藩士は口々に「利休饅頭ぶち美味い、豆子郎もぶち美味、利休饅頭ぶち美味い、豆子郎もぶち美味」と連呼しながらキョンシーのように突進してくるため、気圧された会津勢は徐々に押し込まれていき、ついには覚馬も絶体絶命の状況に追い込まれます。どうなる覚馬。


この覚馬の窮地に、吉川晃司の代表曲「モニカ」を熱唱しながら颯爽と登場した人物がいます。元水球日本代表の西郷どんでごわす。九州のはしっこにいる薩摩にしてみれば、本州ごときのはじっこにいる長州ごときが調子に乗るのを許すわけにはいかなかったのでしょうか。先端恐怖症の人たちにとっては実にたまらない展開ではないかと想像しましたがあくまで素人の感想なので気にしないでいいと思います。西郷隆盛新島襄の豚の絵を褒めて以来の登場でしょうか。


薩摩勢の合流で息を吹き返した会津勢ですが、好事魔多しと申しましょうか、再び覚馬に危機が訪れます。長州勢が放ったと思われる大砲が覚馬の近くで着弾します。どうなる覚馬。来週を見逃すな。はい来週来た。命に別状なし。しかし眼のあたりに深手を負ってしまいます。それでも超人的な忍耐力で大砲や鉄砲隊を指揮する覚馬は、長州勢が立てこもって最後の抵抗を示している鷹司邸に向けて大砲をぶっ放します。これが功を奏して長州勢の敗北が決定的となるのでした。もちろん桂小五郎は逃げ延びて金麦をぐびぐび飲んでいました。


さて、一方冒頭で触れたカナダからの手紙の内容はどのようなものだったのでしょうか。カナダからの手紙ではなく、覚馬からの手紙ですが、あくまで素人のダジャレなので気にしないでいいと思います。覚馬からの手紙は、なんと八重と川崎尚之助の縁談を勧めるものでした。「テキサスブロンコ」「会津の暴れ馬」という異名を持つ男勝りの八重を嫁にもらおうというまともな男がこの世に存在するとは思えない状況で、もし川崎尚之助が八重の夫になってくれれば山本家としても一安心ですし、尚之助としても八重を嫁にとれば会津藩への仕官の願いも叶うというわけで両者にメリットありと見たわけです。


突然降って湧いたような話に戸惑う二人でしたが、例によって例にごとく次第に良い雰囲気になっていきます。しかし、ここで実はこの「八重の桜」というドラマの最大の難点が眼につくようになります。良い機会ですので、誰からも頼まれたわけでもないのに、その最大の難点について解説をしておきたいと思いますが、あくまで素人の解説ですので気にすることはないと思います。


まず、この八重の桜というドラマは、山本八重という極めてユニークなひとりの女性(しかも「歴史的人物」ではない女性)にスポットライトを当てているという点でこれまでの大河と一線を画するものになっています。この八重といういわば市井の人物の魅力を余すことなく伝えるということが、このドラマの重要な使命のひとつであるとすると、主役の八重役に綾瀬さんを起用した段階で既に、この八重の桜というドラマはジレンマを宿命づけられることになります。その理由は、八重の魅力は、基本的に、彼女の容姿の美しさに由来するものではないという点に由来します。このドラマで綾瀬さんが輝けば輝くほどその美しさに目を奪われてしまいます。尚之助などが八重に惹かれていく場面を見ていても「ああ、米俵を軽々抱えるほど怪力で鉄砲をぶっ放すような豪快な一面がある一方で、茶目っ気もあってなおかつあんなに可愛かったらそら尚之助も惚れてまうやろ!」という感想にならざるをえません。でもそれは八重であって八重でないとも言えてしまうわけです。


では、美人女優以外の選択肢はあったのかという問題が出てまいります。これが男であればタッキーではなく竹中直人という選択が実際にあり得たわけです。秀吉がジャニーズだったらおかしいけんのうという自然な声に応えることができたわけです。では今回のように女性の場合はどうでしょうか。女版竹中直人は誰かという話になるわけですが、これが実は予想以上に難問なのです。非美人系の八重の候補をひとりひとりシュミレーションしてみます。


  • あき竹城

八重役にあき竹城、新島襄役にオダギリジョーというカップルとなると、世界仰天ニュースのようなテイストになり大河としては若干苦しい


  • 泉ピン子

新島襄役が角野卓造、脚本が橋田先生になり、「洋風拉麺同志社」を舞台にしたラーメン屋の物語になってしまい大河としては若干苦しい


また角野卓造の話になり大河としては若干苦しい


結局角野卓造の話になり大河としては若干苦しい。ていうかそれミセス・ダウト


それこそミセス・ダウト


よく分かんないけどダウト。





以上、若干苦しい。