ペレの憂鬱と徳川埋蔵金

ペレの表情が冴えない。ワールドカップなどの大きな大会になるとテレビ中継の合間にスタンドで観戦するペレの姿が映し出されるのがお約束になっている。しかし、ここ最近ペレがサッカーを楽しんでいる姿を見たことがない。なぜか日当たりの良い店先に置かれてしまった運の悪い鮮度の落ちたイワシのような虚ろな目で試合以外のものに視線を送っていることがほとんどだ。

ペレはサッカーへの興味を失っているはずだ。暑苦しいスタジアムでサッカー観戦をするよりも、自宅の涼しいリビングでダウントン・アビーを観ている方が断然いいと思っているはずだ。というか、あのテレビに映し出されたペレがあのペレなのかすら実は怪しいのだ。影武者なのかもしれないし、サッカー未経験の二代目ペレなのかもしれない。

ペレと聞いてサッカーを連想するのは仕方ないにせよ、ペレの生活の中心に常にサッカーがあるという勝手な思い込みはもういい加減やめてあげるべきだ。おそらくペレは女子卓球とかのほうが好きだ。こっそりはてなハイクとかしているし、匿名ダイアリーとかにも定期的に投稿しているし、ガリガリ君は箱買している。ノイズキャンセリング・ヘッドホンは購入したが使用はしていないし、説明書は読まないが捨てもしない。とりあえずEDではない。

もちろん、私とて鬼ではないので、サッカー中継の合間のアクセントとしてペレが観戦する姿を映す慣習をただやめろと一方的に主張しているわけではない。ペレの姿を映すかわりに、徳川埋蔵金の発掘現場との二元生中継を行うのだ。もちろんこれにはリスクもある。右サイドでボールを受けたロッベンが猛烈なスピードで突き進み、ペナルティエリア付近で切り返してDFをかわして中央に切れ込み、GKの位置を一瞬で確認して左足を振り抜こうとしたその瞬間、赤城山の徳川埋蔵金発掘現場に画面が切り替わってしまう。「ついに穴が開いた。天井を突き破ったのだ。一体この下にはどんな空間が広がっているのか。期待感は次第に頂点に達していく。」

もちろんコアなサッカーファンからの抗議が殺到するのは間違いない。しかしそれがテレビではないのか。それとも「あー、ペレだ→ペレだ↓」という視聴者の棒読みの心の声を引き出すのがテレビだというのか。

とにかくペレに自由を！ペレに自由を！
ペレのペレによるペレのための自由を！
中間管理職に裁量を！
労動者に有給を！
TVに徳川埋蔵金を！

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