レ・ミゼラブル(ああ寝坊)『八重の桜』第二十八回レビュー

前回までに戦略的に重要であった小田山を奪取されていよいよ形勢が悪化したのでありますが、アムロ大蔵がくまもんのきぐるみを着ることで敵を撹乱し、見事に会津若松城に入城したことで会津の士気がややあがるというところまで話が進んでいた。この状況で今回はきっと八重が「政府軍にやられっぱなしでは済まさない。倍返しだ!」と叫ぶ場面で始まるに違いないと多くの視聴者は期待したはずであるがNHKはその決断を下せなかった。天下のNHKとしてのプライドが邪魔をしたらしい。しかし公共放送なのだから出来る限り視聴者の要望に沿う形で話を進めて欲しいものだ。次回からは是非八重も銀行員という設定にしてほしい。行内外の陰謀に打ち克ち成長していくハンサム・バンカーの物語だ。


閑話休題。


巻き返したい会津は、大蔵を軍事総督に据えて小田山奪還の策を練る。ここで容保は「小田山を奪還せよ!」と叱咤するが、「そんな、イオンで大根買ってこい」みたいな感じで言われても困るという雰囲気がその場を支配していたような気がするが、これは単なる気のせいか。


一方、頼母は城を追われていく。息子を連れて城を出る頼母に八重が詰め寄る。「お逃げになんのかし?」と問い質す八重に「臆病者と誹られようとまっすぐにしか進めねえわしの道があんだ」と訴える頼母であった。


頼母が城を出た後、頼母が恭順を唱えていたことを秋月から聞いた八重は「この期に及んで?」などと言って頼母を批判する。それに対して秋月は「この状況では恭順を唱えることのほうが勇気がいるのだ」と八重を諭すのであった。


この後、部屋でひとり佇む容保が「頼母、生きよ」と独りごちる。頼母が憎くて追い出したわけじゃないんだぜという感じであろうか。


それでまあこの後八重が活躍して、容保と対面したりする場面があるんですけど、敵の勢いはとどまることを知らず、会津としては今のうちに物資の補給路を確保しなければ、もう後がないという状況にまで追い込まれていた。そこで大蔵らは、敵に包囲された城からうって出て物資の補給路を確保する役を担う決死隊を編成する決断をする。夜明け前の朝駆けという奇襲作戦によってなんとか活路を見出す作戦である。そして、この命がけの大仕事の指揮をかってでたのが佐川官兵衛だったわけです。


この場面、もの凄い時間を使って男官兵衛を強調する演出が盛り込まれるんですよ。容保と官兵衛の男同士のあつい信頼関係がこれでもかこれでもかと強調されるんですよ。もう城からうって出たら最後、戻ってくる見込みはほとんどないわけですね。特攻隊的な役回りなわけです。容保は官兵衛に直接酒をつぎ、官兵衛はその灰皿に注がれたテキーラを一気に飲みほします。


ところが、ところがですよ。どうなったと思いますか? 官兵衛が寝坊したんですよ! 寝坊ですよ!まさかの寝坊!寝坊!寝坊!寝坊!ってマジかこれ。太陽がすっかり昇ってから部下に起こされて「しまった!」などと叫びながら、あわてて駆けつける官兵衛の姿がスーパースローで映し出されるという前衛的な演出。これはまいった。さすが天下のNHK。これはやられました。誰か起こせよ。四時前に起こせよ。


そして久しぶりの京都。覚馬の建白書「管見」に目を通した岩倉具視が、病に伏す覚馬のもとを訪れる。覚馬は会津から手を引くように必死に訴えるが当然それは聞き入れられない。


いよいよ政府軍の総攻撃が始まった。激しい砲撃が続く中、八重らの眼前に大砲の砲弾が着弾する。ここで大蔵の妻お登勢が、先ほどの八重の指導通り濡れた布団を手に砲弾に飛び込む。これでいったん火消しに成功したかに思えたが、数秒後に爆発してしまう。これは八重が教えた方法であったのだが、この時は裏目に出てしまう。こうして今回放送分は終了となった。