「近代国家とは何か?」『八重の桜』第十八回レビュー改訂版

前回のレビューの解釈の妥当性をめぐっていささか疑問が出てきた部分もあるので、全面的に改訂することにした。今回レビューする第十八回というのは五月五日放送分の「尚之助との旅」であります。


慶喜が将軍職に就いたことで国のあり方をめぐって佐幕派と倒幕派の対立が鮮明になる。ちなみに八重の桜では「なじょなる?」という言葉が頻発するが、あれを会津弁だと勘違いしてはいけない。あれは「national?」と言っているのだ。つまり、幕末から維新期を駆け抜けた人々が「近代国家とはなにか?」というアポリアを自らに問いかけているわけだ。ここが八重の桜の肝となっている。


さて、いきなり話が本質的な部分に行ってしまって申し訳ない。とにかく、佐幕派と倒幕派の対立が鮮明になるなか、ど佐幕派の会津に危機が及ぶ可能性を察知した尚之助は自らの眼で会津の守りを確かめるべく藩周辺の視察に出る。1867年秋のことである。背炙山などを回って猪苗代湖南で一泊。たいへん美しい風景だ。


場面変わって京都。会津藩は政局の乱れのあおりで未だに京の都に足どめをくらっている。そこに蝦夷地に遠ざけられていた秋月が呼び戻されてきた。バターの塊の上に生クリームとクリームチーズをのせてそこにメイプルシロップをたっぷりかけたようなコテコテ出演者の中で秋月役の北村有起哉はまさに一服の清涼剤のような存在である。また、山川大蔵玉山鉄二)が海外視察から帰ってきた。せっかくECCで英語を学んだはずなのにドイツ、フランス、ロシアと回ってきたらしい。しかも、戻ってきたらなんだかキャラが一変している。検査をしたら薬物反応が出そうな勢いであるが大丈夫だろうかと容保も心配そうな表情を浮かべていた。容保への挨拶を済ませると、覚馬、秋月、大蔵の3人が集い、大蔵のヨーロッパ視察の様子などを聞く。直接ヨーロッパを目にした大蔵の結論は「志があれば日本はだいじょうブイ!」というものだった。結論が志って! お前は何を見てきたんだ!


というところで場面変わって、再び八重と尚之助の藩内視察旅行。白河に入り、白河の関や白河小峰城を視察した後、会津だるま購入。その後、高台から安達ケ原を眺めて、二本松城を視察。そして二人で二本松藩内を歩いていると、突然銃声が響き渡る。銃声の方向に子どもたちが銃を学んでいる。指導しているのは二本松藩木村銃太郎である。二本松少年隊の話は涙なしでは語れない。わずか12歳の少年が戦闘に参加し命を落としている。


その少年たちに銃の腕前を披露した八重。少年たちからヤンヤヤンヤの声援を受け、ドヤ顔の八重が可愛い。帰り際に少年の一人が、銃を打つ際に目をつぶらないようにするためにはどうすればよいかと八重に尋ねてきた。それに対して八重は「眼のことは忘れて弾丸の行方だけ追えばいい」と禅問答のようなことを言って少年を煙にまき、怪訝そうな表情を浮かべる少年に会津だるまをプレゼントして懐柔していた。


へいへいお次は大阪。薩摩がついに動き出す。薩摩兵1000人キタ━━━━(゚∀゚)━━━━!! そして元水球日本代表の西郷ドンのもとを訪れるポイズンな男は誰だ。そうさそうだぜ浦和出身の反町キタ━━━━(゚∀゚)━━━━!! 大河出演はあの名作「トミーと利家とまつ」以来だという。西郷ドンの従兄弟大山弥助(巌)役である。ポイズン弥助どんは故障した銃を格安で300丁買い付けてきた。「故障した銃?」と訝る西郷ドンに対して、「とにかく質より量を確保する時期だ!いつ買うの?今でしょ!」と主張する弥助ドンであった。


その薩摩は土佐を仲間に引き入れて倒幕の勢いを加速させるつもりだったが、この期に及んで土佐が兵を出さないと言ってきて困っちゃった。12月7日に神戸開港を控えており、その際に各国大使の前に慶喜が出て日本のトップとして承認される事態は避けたいと考える西郷には焦りの色が滲んでおりBGMのモニカの勢いもいささか弱くなっているか。


一方、会津は銃の買い付けがうまくいっていない。質にこだわりすぎたことを反省する覚馬であったが、ちょうどそのとき「ええじゃないか」の群れに出くわす。そしてなんてそこで西郷を見かける。あれっ西郷ドンは大阪にいたんじゃないのか。そうか京阪電車で京都に出てきたのか。覚馬と西郷の視線が一瞬合う。が、すぐに西郷の姿は見えなくなる。「君の名は?」と問いかける覚馬であった。西郷だよ。ネタがいささか古くて恐縮です。西郷を追う覚馬であったが、そこで暴漢に襲われる。また裸になって暴漢を投げ飛ばすのかと期待したが、覚馬の視力は想像以上に悪化しており暴漢の姿を確認するのもままならず取り敢えず全裸になって立ちつくしている。覚馬絶体絶命。この窮地を救ったのが遠山の金さんだったのはここだけの話だ。


そしてまた場面は会津へ。ついに尚之助のお召抱えが決まる。喜びに沸く山本家であった。ここでまた八重と尚之助がイチャイチャしてました。


ハイ、次は京都岩倉邸。ハマコー似の岩倉役を小堺一機が演じるという強引さは気にかかるが、とにかく岩倉は、慶喜と容保を討てという内容の密勅が出ると大久保に告げる。ちなみに実際の大久保利通は、あえて言うと昔のプロ野球の中継ぎ投手のような面立ちであり、少なくとも徳重・オブ・ジョイトイには似ても似つかないという点も指摘しておきたいと思います。さらに岩倉は、倒幕派が天皇の命を受けて戦っていることを示すために、錦の御旗を掲げて戦う案を出す。いよいよ待ったなしの状況となってきた。


そして京都二条城。慶喜と容保の会談。慶喜は、土佐の山内容堂が大政を奉還するように進言してきたことを容保に伝える。そしてなんと大政奉還案を受諾する旨を伝える慶喜であった。幕府命の容保は怒りまくるのだが、慶喜は「政権を握っているから狙われるのだから政権を手放しちゃえばいいじゃない」という名言を放つ。形だけ大政を奉還して時間稼ぎをしている間に徳川家による実効支配を確実なものにしていくという算段のようだ。


しかし、ワインをぐびぐび飲んでカステラ食べたらなんかしらんけどゲロ吐いた慶喜の姿を見ながら次回に続くのであった。カステラ業界の反発は必至である。


もちろん新島襄は出て来なかったぜ。