サトイモの素揚げという奇跡

自分でも忘れてましたが、このブログはオシャレなレシピを紹介することを目的にしています。もちろんひとくちにオシャレと言っても「あっ吉田部長、今日のネクタイはプリキュアですか。いつもオシャレですね.....」みたいな意味でのオシャレとは全く違うと言っても過言じゃないです。


さて、オシャレの定義を明確にしたところで、早速本題のレシピの話に移りたいと思います。世知辛い現代社会ですからね。もちろんひとくちにレシピと言っても「あれっ?この光景は以前にどこかで見たことがあるな...」みたいな意味でのレシピとは全く違うと言っても過言じゃないです。それはレシピじゃなくてデジャブですわ。


さて、レシピとデジャブの区別を明確にして議論を整理し終えたところで、実際にオシャレレシピを紹介してみたいと思います。今日紹介するのは「サトイモの素揚げ」です。


サトイモというのは、被子植物門の単子葉植物綱のサトイモ目のサトイモ科のサトイモ属に分類されます。一言で言えばサトイモです。学名は Colocasia esculenta。「Colocasia」は、ギリシャ語で「食べ物」を意味する「colon」と、「装飾」を意味する「casein」という言葉をあわせたものらしい。なぜ食べ物と装飾を合わせてしまったのかはよく分からない。ギリシア人なりの苦悩が刻まれているものと推察される気がしたが、ギリシア語だからと言ってギリシア人が名前を付けたのかどうかはよく分からないのでこの話には深入りせずに話を元に戻すと、サトイモの学名の小種名の「esculenta」という単語も実は「食べられる」という意味らしい。つまり「Colocasia esculenta」だと「食べられるよね、飾りにもなるよね、繰返すけど食べられるよね」というような名前を付けられていることになり、とにかく食べられる運命のようだ。学名のColocasia esculentaを無理矢理日本語に意訳すると「食物連鎖下位太郎」あたりが適当であろうか。


さて、サトイモの日本での歴史は古く、米よりも前に日本に伝わったらしい。ここで「米」と書いたのは「米国」を略記したものではない。それだと、サトイモは日本に伝わった後でアメリカに伝わったという意味になってしまう。これはこれでひょっとして正しいのかもしれないが、わたしはアメリカにおけるサトイモ文化の受容を専門にしているわけではないのでよく分からない。アメリカにおけるサトイモ文化の受容を専門にしている人がいるのかすら分からない。「米よりも前に日本に伝わった」という場合の「米」というのは「稲」を意味するところの「米」である。稲作が日本に伝わったのはかなりの大昔だから、それよりも前に伝わっていたということはおそらく相当古くに伝えられたということを意味しているのだろう。具体的には日本には縄文時代に伝わってきたという。縄文時代というのは、暴力的に単純化してしまうと、もの凄く昔っていうことだ。稲葉がプロ入りして最初のヒットを打った時より昔の話だ。北尾がおかみさんを殴った前後だろうか。北尾がおかみさんを殴った前後の我が国のサトイモ文化の受容を専門にしているわけではないので正確なところは正直言ってよく分からない。


いつになったらレシピの話になるのか。うっかり「サトイモの素揚げの作り方を紹介しているのかな」と思って読み始めてしまった方の立場からすると、そのあたりも気になるとこではないかと想像しますが、書いているほうの立場からするとそんなことまったく気になりません。もうこのままレシピなんか紹介しないで終わるのもオシャレかなくらいの感覚です。


それでも本題に移ります。


「サトイモの素揚げ」というのは極めてシンプルな料理です。極めてシンプルなレシピなだけにサトイモの品質には是非ともこだわってほしいと思います。近代資本主義において効率最大化を重視して構築された分業体制がもたらす非人間的作業の存在を全面的に肯定し、ベトナム人の労働者によって組み立てられた軽自動車で近所のスーパーに出向き、サトイモ農家とは会話を交わしたこともないレジ係のお姉さんとにこやかに談笑しながら、中国産の冷凍サトイモを買ってくるなどという愚をおかさずに、必ず自らの手で栽培してほしい。


サトイモは多湿を好む。そのため耕土が深くて水持ちのよいよく肥えた土地を選ぶ。植える1ヶ月以上前に、1aあたり完熟たい肥200kg、炭酸苦土石灰(粒)10kgを全面散布し、耕うんしておく。1aあたり15~20kgの種イモを用意する。種イモは、病気や傷がなく、60~70gで丸く大きいものを選ぶ。畝幅1mで株間30~40cmの1条植えとする。イモの肥大には十分な水分が必要である。特に7月中旬以降から8~9月にかけて急速に肥大するので、この時期は乾燥させないようにかん水する。また連作には弱いので少なくとも3~4年の輪作が必要である(参考サイト:JAつやま)。


サトイモの素揚げを紹介したいだけなのに連作障害の心配までしてしまった。これは近い将来のクラウドアグリビジネスの出現を予感させるのに十分な未来的展開であると言えばやや言い過ぎになるだろうか? 言い過ぎだ。かといって「近い将来のクラウドアグリビジネスの出現をちっとも予感させない」とこちらが断言してしまえば、「そうだね」と返されて終了というような展開も想像に難くない。思い通りにいかないのが人生だということか? 責任回避目的で疑問文にしてみた。ちなみに、クラウドアグリというのは、農業には雨雲が必要だよね的な軽いニュアンスで使っているわけではなく、鈴木亜久里ユビキタス化という問題が念頭にあることだけは申し添えておきたい。


さてイントロダクションが長くなってしまったのでここでいったんまとめておこう。要するにサトイモにこだわり過ぎてはいけないということだ。歴史的にみて、日本人はサトイモにこだわらない、こだわれない、こだわりたくはないという姿勢で臨んできたのは明白である。侘び寂びロッケンロール的なニュアンスだと思われる。とにかくサトイモを用意してほしい。どれくらいの量を用意すれば良いのか? それについては、たくさん食べたい人はたくさん用意する必要があるし、少ししか食べない人は少しだけ準備することが肝要である。しかしもちろんサトイモがどうしても準備できない人はジャガイモやサツマイモでもいい。イモならもうなんでもいい。イモでなくてもいいくらいだ。キャラメルやキムチでもいい。迷わず行けよ。行けば分かるさ。



どこまで進みましたか。サトイモは準備してくれましたか。サトイモを準備したら皮を剥いてください。ちなみに、サトイモの皮を剥いていて手が痒くなるのは、皮の下の細胞に集積したシュウ酸カルシウムの結晶が壊れて針状になり皮膚に突き刺さるためらしい。なんか凄い話になってきたでしょ。全部Wikipediaの受け売り。


皮を剥いたら薄切りにします。このときの厚みが超重要。きっかり3mmがベスト。0.1mmずれたらもう全然ダメ。園山真希絵がアメバブログからはてなブログに移るレベル。岸朝子もブチ切れ。ケンタローは骨折。お大事に。平野レミだけやたら元気。とにかく3.1mmとか2.9mmになったらもう捨ててください。ウソ嘘。全部嘘。厚さは自由。好きにしてください。分厚いのが好きな方は分厚く、薄めが好きな方は薄くスライスしてください。もちろん、本当は分厚いのが好きなんだけど今日は薄く切ってみるという自由も担保されています。


サトイモをスライスしてくれましたか? 里芋を薄切りにしてくれましたか? ここまでくるとマラソンでいうと40km地点くらい。100kmマラソンだけど。鍋に油を入れて熱してください。油に鍋を入れて熱しないように。洗うのが大変。油の温度は何度だったか測ってないから分かりませんが印象としては熱そうでした。1時間も指を突っ込んでおいたら火傷してたと思います。油を熱したら、スライスしたサトイモを投入します。油面からきっかり15度の角度で、サトイモを油に滑り込ませる要領で投入します。角度は15度でなくてもいいです。スカイツリーのてっぺんから投げ入れても構いません。とにかくサトイモを油の中に入れることが重要。せっかく鍋に油を入れて熱しても、その後で、薄切りにしたサトイモを冷蔵庫にしまっているようではいつまでたってもサトイモの素揚げは完成しません。とにかくスライスしたサトイモを油に入れてください。お願いします。


油にサトイモを投入してから引き揚げるまでの時間ですが、夢中で揚げていたのでよく覚えていません。あっ美味しそうだなと思えた頃が目安です。想像ですが、高温で短時間で揚げても、低温で長時間揚げてもどっちも美味しいと思います。とにかくサトイモが好きなのかどうかがポイントです。揚げる時間のせいにしてたらダメだ。人生あんた次第だろ。


油からサトイモを引き揚げたら塩をふります。塩はこだわってください。塩くらいこだわってください。白い粉ならなんでもええわいなどと嘯いていると、「おう兄さん、えらい景気良さそうやけど、そろそろブタ箱で臭い飯でも喰らう時間とちゃうのんかどうか裁判所に決めてもらう頃合いとちゃうのんかい?オオッ?」などと言いながら屈強そうな兵庫県警あたりの私服刑事があなたの家の玄関に現れることになるんじゃないかと心配しています。とにかくパラッとふります。塩をふったら、右利きの人は右手に箸を持ち、左利きの人は左手に箸を持ちます。箸を持ったら、今度はいったんその箸を机に置きます。箸を机に置いたら、右利きのひとは右手で左手の人は左手で直接サトイモをつまみます。サトイモをつまんだら、今度はすぐにアチチっと言いながらサトイモから手を離します。右利きの人は右手からサトイモを離し、左利きの人は左手からサトイモを離せばいいわけです。その後、サトイモの熱さが程よい感じになってきたと直感したら、いよいよ箸か手でサトイモをつまんで口の中に放り込んで下さい。美味しいです。これは本当に美味しいです。


サトイモの素揚げに塩をふって食べてみて下さい。


実際に言いたいのはそれだけですがその前に4000字も無駄なことを書いてしまいました。最後にひとつだけお願いがあります。私のことは嫌いでも、サトイモのことは嫌いにならないでください。ありがとうございました。